長距離ドライバー職の魅力は?友人が語った”働きながら旅をする”仕事の喜びとは

ドライバー

人の移動が制限され、メディアが発達していなかったかつての時代、旅人の話は人々にとって何よりの娯楽だった。

そして現在、あらゆる情報が自宅にいながらにして得られる世を迎えながらも、やはり旅人の語りの中には、さまざまな発見や驚きがある。

さて、自分にとって身近な旅人といえば、知り合いに少なからずいる長距離トラックのドライバーだ。

筆者は青春の一時期、運送業に従事する友人(恋人ではない)と共に暮らしていたことがあった。

地元が同じ四国で年も近いという、たったそれだけの共通項で仲良くなり、無駄に広い家に住んでいた自分は、その友人に空いていた部屋を貸した。

仕事で東京に寄った時、足を伸ばして寝られる場所があれば疲れも取れるだろうという筆者なりの配慮である。

大型トラックで全国を巡る彼は、いつも各地のおいしいものや珍しいもの、そして何より面白い話を土産に持ち帰ってくれた。

また、ドライバーの友達にはやはり同業者が多く、「面白い人を連れてきた」といってトラック仲間を紹介されることもたびたびあり、会ってみると確かにみんな個性的な人ばかりだった。

当時、毎日オフィスに座って鬱々と仕事をしていた筆者は、友人の働き方とライフスタイルに密かな羨望を覚えたものである。

その経験から今でも強く思うのは、長距離ドライバーとは「働く旅人」であるということだ。

全ての人がそうであるとまでは言わないが、少なくとも自分が知り合ったドライバーたちは、仕事の中で自分の世界を広げ、楽しみを見つけることに長けていた。

いくらうらやんだところで、車を運転したことがない筆者は彼らの生き方を真似ることはできないが、読者の中には大型免許を持っている方もおられるはず。

そこで本稿では、筆者が友人から聞いたドライバー仕事にまつわるエピソードをご紹介。

読んでいるうちに、あなたももしかしたら運輸業界に転職したくなる……かも?

仕事を通じて見つける人生の楽しみ

「日本各地を回っているといっても、あくまで仕事だから旅行で行くのとはやっぱり違う。でも楽しい」

筆者の友人がことあるごとに言っていたセリフである。

確かに、決められた時間内に荷物を届けなければいけない以上、自由にどこにでも行けるわけでは決してない。

それどころか大型トラックともなれば、停車できる場所も限られる。

実際、その友人はせっかく名所にさしかかっても車窓からチラリと見るだけということはしょっちゅうだと語っていた。

だが、自分に言わせれば、普通の観光客にない気づきや体験を、彼は仕事を通じて得ていたように思う。

観光地には一切立ち寄らないが、その土地ならではの魅力を見つけることに、彼は実に長けていた。

ドライバーであると同時にサーファーであり、バイク乗りでもあった友人は、走りながら穴場の浜辺や峠を探し、休みになるとそこへ繰り出す。

ご当地グルメに関しても、各地のおいしい店を食べ歩きならぬ食べ走りとばかりにチェックする。

ごく狭い地域でしか流通していない珍しい魚や、普通の八百屋に売っていない変わり種の野菜や果物をよく買ってきてくれたのも、自分にとってはいい思い出だ。

そして、行った先々で人と触れ合い、その土地の人情に触れて、友達まで作ってくる。

旅行は基本、ある程度計画を立てて目的地を目指すものだが、彼の場合はまず仕事あってのこと。

限りなく受動的な「旅」であるのだが、その中で何かしら面白いものを見つけてくるのである。

例えば、この時期にはどこそこの港に出ている牡蠣小屋が最高にうまい、シーズンが終わる前に行こうと実に気軽に誘ってくる。

行こうといっても、地図で確認したら自分にとっては遠出も遠出。

ところが彼は、まるで近所に出かけるくらいのノリで言ってくるのである。

こういう時、日本はこれほど広いのに、自分はなんと狭い世界で生きているのだろうとしみじみ思ったものだ。

いずれにせよ、一緒に時間を過ごしていると、一瞬たりとも退屈であると感じない。

彼は筆者にとってそういう友人であり、とにかく見聞が広く、自分よりもよっぽど物事を知っていた。

ちなみにそんな彼は学業が大の苦手で、学生時代は机にじっと座っていることすらできないタイプだったという。

その代わり、と言ってはなんだが、彼は学校では絶対に学べない「人生の楽しみ方」というものを、長距離ドライバーの仕事を通じて体得している。

それは自分が頭の中に詰め込んでいる無駄な知識より、ずっとかけがえのないもの。

会社員を辞め、半分フリーランスのような生活をしている今も、筆者はいまだに彼のような働く中での楽しみと喜びを、残念ながら見つけられていない。

楽しみは自分で見つけることに価値がある

「長距離のドライバーって、ひとりの時間が多いんだよ。

今は配送助手を使うところもあるだろうけど、自分はひとりで走ってたので、目的地まで黙々と運転するのが仕事だったのね。

ドライバーをやっていてよかったなって思うのは、そのひとりの時間が有意義だったってこと。

好きなルートなら運転に集中したり、あとは目的地までひたすら好きな音楽を楽しんだりとかね。

まだCDが主流だった頃は、東京に行くたびに渋谷辺りで山ほど買い込んで、地元に帰った時にこんな面白い曲があるって友達に教えるのが楽しかった。

運転席の裏にあるスペースがCDの山になっていた時期もあって、『走るDJボックス』って先輩に笑われたよ。

あとは自分の場合、荷物は手積みが多かったんだけど、それにも一時期こってしまって。

リアルテトリスみたいなものだからきっちりバランスよく積めるようになると、『どうだ!』って感じで本当に気持ちいい。

もちろん大変なこともたくさんあるけれど、せっかく自分ひとりの時間がたっぷりあって、しかも仕事とはいえ日本全国を巡れるわけだから。

その中で楽しみを見つける癖が、自然に身についたのかなとは思う」

以上はこの原稿を書くにあたり、久々に電話をして聞いた友人の話。

話をしていて思い出したのは、彼が空荷で帰省をする時に、一度だけ途中まで助手席に乗せてもらった時のことだ。

大型トラックについて全く知識がない自分は、まず運転席の裏にあるスペースに驚いた。

彼いわく、荷台を大きくするためにこの部分を削ったタイプの車もあるそうだが、自分は絶対こっちの方がいいと言っていた。

そこは、まるで大人の秘密基地。

人ひとりが寝転がれる程度のスペースに、彼の好きなものが全部詰まっている、そんな場所だった。

そして乗ってみると、想像以上に視点が高い。

車高があるから当たり前だが、これが何とも心地よく、自分にとっては新鮮だった。

さて、そういう彼は現在、すでにドライバーを辞め、別の仕事をしているそうだが、ときおりトラックで全国を駆け巡る「旅生活」に戻りたいと感じることもあるという。

「当時は本当に行く先々で出会いがあって、ドライバーをやっている間にできた友達は今でも何だかんだつながっているよね。

あと、ドライバー同士ってやっぱり仲間意識があって、知らない人でも道ですれ違った時には『今日も仕事お疲れさん』って思うし、行き先が同じだったらお互い走りやすいいい感じの車間距離を取ったりとか、運転で『会話』ができるようなところがあるんだよ。

振り返って思うと、仕事の中の一番の楽しみって、そういう人との付き合いだったかもしれない。

長距離ドライバーってひと言でいってもいろんなタイプがいて、人付き合いをしたくないってオーラを出しているドライバーも確かにいる。

でも、知り合いがあちこちにいた方がいろんな情報が入ってくるし、困った時には助けてもらえるし、何より楽しいんだよね」

総じて言えば、仕事では生活のため、お金のためと割り切って働く方が気楽であったり、効率がいいというケースも確かにある。

だが、どうせ人生のうち多くの時間を仕事に費やすのなら、やはりその中で何かしらの喜びを見出す方が、充実したワークライフを送れることは間違いない。

長距離ドライバーの仕事にしても、言われたところに仕事だから仕方なく行くと捉えるか、それとも働きながら旅気分も味わえると考えるかでは、得られるものは全く異なる。

つまり、働き方が満ち足りたものとなるかどうかは、ある意味自分次第。

ぜひ、より多くの方々が、今よりもっとポジティブ思考で日々の仕事に向き合うことを願ってやまない。

もっともそれは、まず筆者自身がやらねばならないことでもあるのだがーー。

御堂筋あかり スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

 

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