女性トラックドライバー「トラガール」を促進すべき3つの理由と活躍の条件とは

ドライバー

トラックドライバーというと、「男性の仕事」というイメージが強いかもしれません。

実際、働く女性がさまざまな分野に進出しつつある現在でも、女性のトラックドライバーはごくわずかです。

一方、トラックドライバーの人手不足は深刻で、業界での高齢化が進んでいることから、このままだとますます深刻化するおそれがあります。

そこで国は「トラガール促進プロジェクト」と銘打った取り組みを推進しています。

「トラガール」とはトラック・ガール、つまり女性のトラックドライバーのこと。

トラガールを増やしてトラックドライバー不足の解消を図ろうというのです。

しかし、そもそも女性にはトラックドライバーとしての適性があるのでしょうか。

男性の職場で、ドライバーとして働くためにはどうしたらいいのでしょうか。

女性ドライバーを雇う側はどのようなことに配慮する必要があるのでしょうか。

本稿では女性ドライバーの現状をふまえた上で、トラガールを促進すべき理由と、女性ドライバーが活躍するための条件について考えます。

トラガールを促進すべき理由

国が「トラガール促進プロジェクト」を推進しようとしているのはなぜでしょうか。

その理由は大きく分けて3つあります。

まだまだ少ないトラガール

まず、女性ドライバーの現状をみてみましょう。

女性の社会進出が進む中、トラック運送業界は他業種に比べて女性の進出が遅れているという問題があります(図1)。*1

図1 全就業者に占める女性の割合

出典:国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/

図1のとおり、2020年に全トラックドライバーに占める女性ドライバーの割合はわずか2.3%にすぎませんでした。

全産業の平均44.5%と比べると、これは非常に低い割合です。

ちなみに、アメリカでは2019年に7%と、決して高い割合ではないものの、日本に比べると女性ドライバーの進出が進んでいるようです。*2

「潜在トラガール」のポテンシャル

では、運転免許の保有数はどうでしょうか。2021年の状況をみてみましょう。*3

大型運転免許をもっている女性は142,631人で、男性保有者数のわずか3.6%とはいえ、2014年に女性ドライバーが約2万人だったことを考えると、潜在労働力としては少ない人数とはいえません。*4-1

さらに、中型の免許保有者は28,543,165人、準中型は5,456,307人で、それぞれ男性の95.2%、96.2%にあたり、高水準にあります。

この「準中型自動車免許」は、2017年に道路交通法が改正されたのに伴って新しくできた区分で、地域内輸送の主力である「2トントラック」に乗車でき、18歳以上で取得可能、さらに事前に普通免許が不要など、気軽に取得できる「トラック入門者向け免許」です(図2)。*4-2

図2  運転免許の区分

出典:国土交通省「トラガール促進プロジェクト>トラガールになるには>お知らせ:免許制度について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/tobe.html

以上のことから、環境さえ整えば、今後この分野でも女性の進出が進み、女性ドライバーが活躍できる可能性が高いことが窺えます。

これが1つめの理由です。

深刻なトラックドライバー不足

次に、国がトラガールを推進しようとしている背景には、トラックドライバーが不足しているという問題があります。*1

トラックドライバーは、労働時間が長いのにもかかわらず低賃金で厳しい労働環境にあり、高齢化も進んでいることから、人手不足が深刻化しているのです(図3)。

図3 トラックドライバーの欠員率

出典:国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/

こうした状況から、2021年5月時点で、トラックドライバーの有効求人倍率は1.88でしたが、この数値は全職種平均の2倍に当たります。

これが2つめの理由です。

トラックドライバーとしての強み

3つめの理由は、トラックドライバーとしての適性です。

運転特性を客観的データによって分析する手法を使って、男女のトラックドライバーの運転特性を分析した結果があります。*4-3

これは、独立行政法人自動車事故対策機構が自動車運送事業者に従事するドライバーを対象に行ったもので、自動車の運転に関する長所、短所といった「運転のクセ」を様々な測定によって見い出す「適性診断」の受診結果からトラックドライバーのデータを抽出し、分析したものです(図4)。

図4 適性診断システムの男女別運転適性診断結果

出典:国土交通省「トラガール促進プロジェクト>コラム 車の運転の個性に男女の違いはあるの?①」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/column.html

調査対象の男性ドライバーと女性ドライバーとでは人数に大きな差があるため、単純に比較できないとしても、図4をみると、グラフの線がほぼ重なっていることからもわかるように、大きな差はみられません。

ただ、わずかに違いが見られた項目を分析して得られたのは、以下のようなことです。*4-4

男性のトラックドライバーは女性のトラックドライバーと比較して、「動作の正確さ」「注意の配分」「判断動作のタイミング」などの動作面で優れている傾向があります。

一方、女性のトラックドライバーは男性のトラックドライバーと比較して、「安全態度」「安全エコ運転度」「協調性」といった点で優れている傾向があります。

女性ドライバーは、安全運転をしようとする意識が高く、急発進や急ブレーキを避ける燃費のよい運転や、他の車や歩行者の迷惑にならないように配慮して運転するなど、思いやりのある運転をする傾向があるのです。

さらに、国土交通省によると、実際に女性のトラックドライバーを雇用した事業者が挙げたメリットは以下のようなものでした。*5

  • 荷主(輸送の依頼主)が柔軟になった
  • 対応がソフトで評判がよい
  • 現場でのコミュニケーション能力が高い
  • 車両の手入れが行き届いている
  • 仕事が丁寧である
  • 企業のイメージアップにつながる

以上のことから、トラックドライバーとしての適性という面からみても、女性のポテンシャルは高いことがわかります。

これが3つめの理由です。

トラガールになるために

以上のことから、トラガールの促進を進めるべき理由が明確になったのではないでしょうか。

では、トラガールとして働くためにはどうすればいいのでしょうか。

仕事内容・勤務形態・勤務時間を選択する

トラックドライバーというと、大型トラックやトレーラーを操るプロフェッショナルといったイメージがすぐに思い浮かびますが、プロフェッショナルにもさまざまな形態があります。

ライフステージによって柔軟な働き方を選ぶこともできますし、バリバリ働いてキャリア・アップしていくことも可能です(図5)。

図5 ライフステージ・運転免許区分による多様な働き方

出典:国土交通省「トラガール促進プロジェクト>トラガールになるには>お知らせ:免許制度について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/tobe.html

国土交通省が行ったドライバーに対するアンケート調査結果によると、前職はドライバ ー以外だった人の転職が半数近くに上り、初心者が珍しくない職場といえるでしょう。*5

自分のライフステージや目指しているキャリア・パスを視野に入れて、仕事内容や勤務形態、勤務時間を決め、具体的な勤務先にターゲットを絞りましょう。

ハローワーク経由で就職する場合に雇用者が活用できる、返済する必要のない雇用関係助成金もあります。そうした助成金の活用実績のある企業を紹介してもらうなど、ハローワークで相談するのも1つの方法です。*6

生じがちな問題を先取りして把握する

トラガール志望の女性の中には、女性の少ない職場に入ることに不安を感じる方もいらっしゃるでしょうが、それは当然のことです。

次のセクションで雇用者が考えるべきことについて触れますが、それは裏返すと、女性の進出がまだ進んでいない職場で起こりがちなことです。

それらを先取りして把握しておき、もし困った状態が起こったときに社内の誰に相談すればいいのか確認し、相談窓口を確保することも有益でしょう。

雇用者が取り組むべきこと

最後に、トラガールの雇用を考えている雇用者が取り組むべきことを考えます。

適材適所を心掛ける

運転自体の適性には問題ないとしても、女性ドライバーは一般に体力面では男性ドライバーと同等というわけにはいきません。

それは1つの個性と捉え、本人の希望をできるだけ考慮しながら、女性ドライバーに適した業務に就いてもらうことが大切です(図6)。*7

図6 一般的にトラガールに適した業務内容

出典:国土交通省(2014)「ドライバー不足の対策していますか? ~トラック運送業の人材採用に向けて~」p.19 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/driver_fusoku.pdf

女性でも無理なくできる業務として、例えばパレットなどの機材やフォークリフトを使った体力的に負担が少ない業務、手積み・手卸しがないダンプや海上コンテナ、宅配や小口貨物 などの配送業務、短時間配送などが挙げられます。*5

女性に配慮した環境を整える

まず、施設・設備について押さえておきましょう。*5

女性を雇用するのであれば、最低限、女性専用のトイレは必要です。

また、更衣室や鏡があるスペースがあると女性の満足度は高くなります。性別にかかわらず、分煙に配慮することも必要です。

「会社にあると望ましい施設・設備」に関するアンケート調査での回答で多かった要望は、「洗車設備・洗車場」「洗車機」といった洗車に関連するものと、シャワー室でした。

もし、シャワー室があれば、身体を動かすドライバーにとって、特に夏場には重宝でしょう。

次に、働く女性に対する支援について考えてみましょう。

トラガールを実際に雇用した事業者が体験した悩みの中に、「家庭の事情による突然の休みが多い」というものがあります。

しかし、それは「女性だから休む」「女性だから急な休みが多い」のではなく、「家族の世話をする立場として、重い責任を担っている」ためです。

これはトラガールにかぎらず、すべての産業でいえることであり、筆者も経験したことですが、育児や介護のための遅刻・早退や欠勤は、やむを得ないことであり、そのような形で職場に迷惑をかけることは、女性にとっても苦痛です。

人手不足が深刻さを増す中、女性に長く勤めてもらえることは会社にとっても財産だと考え、女性に配慮した環境を整えていくことが必要ではないでしょうか。

そのためには、妊娠・出産を考慮した育児休業制度や再雇用制度の整備に取り組むことも大切です。 *7

トラガールの雇用には、国の各種助成金や奨励金が適用されます。*4-5

それらを活用すれば、負担を軽減しながら、トラガールの受け入れ体制を整えていくことができるでしょう。

さまざまなポテンシャルを秘めた女性のトラックドライバーの活躍は、単に人手不足を解消するための手段に留まらず、男性が主流だった業界に新たな気づきや価値観をもたらす可能性もあるのではないでしょうか。

*1 国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/national/

*2 東洋経済(2021)「8万人足りない!米国「トラック運転手不足」の末路」(2021年11月21日) https://toyokeizai.net/articles/-/470473?page=3

*3 警察庁(2021)「運転免許統計 令和3年版」p.2 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo/r03/r03_main.pdf

*4 国土交通省「トラガール促進プロジェクト」 *4-1同「トラガールになるには>女性の活躍に向けて」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/about.html

*4-2 同「トラガールになるには>お知らせ:免許制度について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/tobe.html

*4-3 同「コラム 車の運転の個性に男女の違いはあるの?①」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/column.html

*4-4 同「コラム 車の運転の個性に男女の違いはあるの?②」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/column2.html

*4-5 同「事業者向け情報」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/joho.html

*5 国土交通省(2016)「若年層・女性ドライバー 就労育成・定着化に関するガイドライン~魅力的なトラック運送業界への進展~」p.7、p.12、p.14、p.22、p.8、p.20 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/ikusei_teichaku.pdf

*6 厚生労働省「雇用関係助成金検索ツール」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00007.html

*7 国土交通省(2014)「ドライバー不足の対策していますか? ~トラック運送業の人材採用に向けて~」p.19、p.14 https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/driver_fusoku.pdf

横内美保子 博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。

 

働きやすい職場認証制度とは?

 

「働きやすい職場認証制度」は、自動車運送事業者(トラック・バス・タクシー事業)の運転者の労働条件や労働環境を第三者機関が評価・認証する制度です。

 

[1]法令遵守等、[2]労働時間・休日、[3]心身の健康、[4]安心・安定、[5]多様な人材の確保・育成、[6] 自主的、先進的な取組み(一つ星認証では参考)の6分野について、基本的な取組み要件を満たすことにより認証されます。

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