あなたは車内で乗客と「会話」しますか? 日本と海外で感じた違い

ドライバー

タクシードライバーの皆さんは、お客さんを乗せたとき、車内でどのくらい会話をしますか?

もちろん、そのお客さんの気質や距離による、ということもあるかと思いますが、筆者が海外を訪れた印象では、海外のドライバーさんのほうが会話好きかもしれないと感じる瞬間があります。

筆者が出会った海外のドライバーさんとの会話にまつわるエピソードを、いくつかご紹介したいと思います。

イタリア人ドライバーの率直な話

筆者がイタリアを旅したとき、空港に到着したのは夜8時を過ぎた頃でした。

空港からの移動手段として最も楽なのはタクシーです。言葉がわからなくても、メモを渡せばピンポイントで目的地に連れて行ってくれる利便性は他には代えられません。

「Where are you from?」
どこから来たのか訪ねるのは、海外の空港から乗るタクシーでは当たり前に聞かれることです。実際、アジア人とわかる風貌ですから筆者が外国人であることは容易に想像がつくことでしょう。

そして女性一人旅です。

イタリア人は観光産業で働いている人でない限り、あまり英語を話さない人が多い印象でしたが、その男性ドライバーはゆっくりとした英語で、ローマで気をつけるべきことを教えてくれたのです。

「イタリアの男は女性に声をかけるのが好きだと聞いたことがあるだろう?ほとんどは悪気の無い奴ばかりだ。でも、中には無理やりどこかに連れて行く連中もいる、だから簡単にはついて行ってはいけない。特に女性一人だから気をつけて欲しい」という話でした。

もちろん、女性の一人旅に注意が必要なのはイタリアに限ったことではありません。ただ、街中に着く前に丁寧に注意をしてくれた優しさに筆者は感心しました。

そして、ホテルの住所にたどり着いたのですが、どうやら筆者が参照していた住所が古い情報のものだったようで、その建物のなかに宿はありませんでした。

建物の前まで送って終わり、ではなく一緒に「宿ではない」と確認してくれたのですが、筆者はイタリア語は話せないのでどうしようもありません。

そこで、筆者に代わってイタリア語で宿と連絡を取ってくれました。「迎えに行くが30分ほどかかる」とのことで、ちょうど目の前にレストランがあったため、店員と交渉してそのレストランで待っていられるように話をつけてくれたのです。

なにか注文しなければ申し訳ないなと筆者は思い、グラスワインとサラダを注文したのですが、そのドライバーはレストランの従業員と一緒に、宿のスタッフが迎えにくるまでの30分を一緒に待ってくれました。

夜は国際便が相次いで到着する時間であっただろうに、しかし筆者は幸先の良い旅の始まりだと嬉しく思ったものです。

(ちなみに、「イタリア人男性はナンパ好き」は本当でした。しかししっかり断れば諦めが良いことも知りましたし、本当に紳士な善意という人もいました。)

何を話しているかわからないけれど情熱を感じたテキサス

さて、次はアメリカ南部、テキサス州のダラスでの出来事です。

ここでも、空港からホテルに向かう道中はタクシーを利用しました。

「Where are you from?」から始まる会話は相変わらずでしたが、「日本から来た」というと、「本当かい?僕は日本車が大好きなんだ」という話に花が咲きます。

筆者はある程度の英語は理解できるほうなのですが、南部には独特のなまりがあり聞き取りにくいものでした。

ただ、

ドライバー:「中でもホンダが好きだ」

筆者:「日本ではスズキというメーカーも人気だよ」

ドライバー:「知ってるさ、良いよね。それも好きだ」

自動車メーカーの名前しか筆者には聞き取れませんでしたが、筆者もドライバーも「楽しい会話をしよう」と必死だったのだと思います。

30分ほどの道中、ひたすら日本の自動車メーカーの名前を並べる会話が続きました。正直、30分喋りっぱなしの中でも、彼が日本車が好きで、特にホンダを気に入っているということがわかっただけでした。

彼にも、私が何を言っているのかわからなかった場面もあったことでしょう。
それでも楽しい時間を過ごせたことに感謝しています。こちらが日本人だから、日本の話題を一生懸命捻り出してくれたのでしょうから。

東京で見る「外国語マップ」は便利だけれど・・・

さて、東京のタクシーでは、外国人観光客向けに英語などで書かれた観光マップが置かれているのをよく目にします。

しかし筆者が外国人だったとしたら?

あまり役に立たないのではないかなあと思っています。

短い距離ではその地図を見ている暇はありませんし、情報としても不十分です。

実際、外国人の立場からすると(特に日本語や漢字は難しい言語です)、目的地に辿り着くまでドライバーがずっと無言であると少し不安を覚えたことがあります。

ある時、ロンドンで郊外まで出なければならない出張がありました。

ロンドン市内に宿を取りましたが、電車事情がよくわからなかったため、比較的長距離ではありましたがタクシーを利用せざるを得なくなったのです。

その時は寡黙なドライバーさんでした。

渋滞に巻き込まれたこともあり1時間以上かかったのですが、日も暮れかけたことがあっていつになれば宿につくのか、なぜここまで時間がかかっているのか、会話が少なかったために少し不安に思ったものです。

筆者から話しかける元気がないほど疲れていたのが最も大きな原因ですが、積極的に話しかけてくれたら嬉しかったなあと今となっては思います。

タクシー運転手は国や街の「顔」

どんな国であれ、観光客にとっては電車やバスなどでの移動のほうが節約になります。

しかし海外の公共交通機関を使いこなすのには慣れが必要です。

東京五輪前から、床が低く荷物を乗せやすい新型車両が東京で増え、確かに外国人を意識した快適な空間だなあとは感じましたが、それが真の「おもてなし」になるとは言い切れないというのが筆者の実感です。

では、英語ができなければダメなのか?

もちろん基本的な単語は分かったほうが良いのは間違いありませんが、時間をかけて英語を学ぶというのも簡単なことではないでしょう。

一方で日本を訪れる外国人の場合、日本語は特に難しい言語だという認識はあるでしょう。また、多くの日本人が外国語に苦手意識を持っていることもわかります。

そのような場合、「必死にコミュニケーションを取る」こと、それもドライバーさんから積極的に助け船を出すことはとても大切です。

筆者がいま便利だなあと思っているのは「指差し会話帳」です。

外国人を乗せる頻度はそう多くはないかもしれませんが、日本の街を走るタクシーはその国や街の顔であると筆者は思っています。

「おもてなし」は英語ができるかどうかではなく、所作の丁寧さだけでもありません。

自分が見知らぬ都市を訪れたとき、何に救われるかを想像してみましょう。

上手でなくても「コミュニケーション」への努力が何よりも安心感や好感を得るのではないでしょうか。

清水 沙矢香 2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

 

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「働きやすい職場認証制度」は、自動車運送事業者(トラック・バス・タクシー事業)の運転者の労働条件や労働環境を第三者機関が評価・認証する制度です。

 

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