安全運転のために 脳血管疾患など怖い病気を予防し事故リスクを低減しよう

ドライバー

タクシーやバスなどの自動車運送業では、安全を守りながら運行するため、事故防止に向けてさまざまな対策がとられています。健康に起因して起きた事案の原因として、病気が原因となっているもののなかでは脳血管疾患が最も多いというデータがあります。*1

脳血管疾患は、突然発症するように思われがちですが、実は日々の生活習慣が原因となる場合も多くあります。つまり、日々の心がけで発症リスクを低くできる病気でもあるのです。車の事故は、亡くなったり後遺症が残ったりするなど、本人だけでなく周囲の人の人生にも影響を与えます。そのため、事故を防ぐためには、日々の健康管理が大切です。

そこで今回は、脳血管疾患に着目し、病気の概要や自動車運送業で働く方がどのようにしたら予防できるのかなどについて解説します。

事業用自動車の事故原因は、脳血管疾患が多い

国土交通省自動車局の資料に、平成21年から平成24年までに発生した499件の事業用自動車の健康起因報告事案の原因を病名別にまとめたデータがあります。

これによると、運転者数は発生件数の多い順に、脳血管疾患が23%、心臓疾患が21%、血管疾患が5%でした。死亡運転者数だけみると心臓疾患が59%と最も多くなっていますが、全体でみると脳血管疾患が最も多くなっています。*1

引用)国土交通省自動車局「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」  https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h26_3.pdf p4

「脳血管疾患」と一括りになっていますが、この中にはさまざまな病気があります。上記のデータには、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞などが含まれており、どれも命に関わる危険性のある病気です。

次の見出しでは、それぞれの病気の特徴について解説します。

脳血管疾患とは?脳卒中とはどう違う?

(1)くも膜下出血

脳は、外側から硬膜、くも膜、軟膜という3枚の膜に覆われていますが、くも膜の下(くも膜下腔)で出血が起こることをくも膜下出血といいます。くも膜下出血の原因で多いのは、脳動脈瘤(脳の血管にできるこぶのようなもの)の破裂です。くも膜下出血が起こると、突然の激しい頭痛と吐き気などが症状として現れます。

(2)脳内出血

脳内出血とは、脳の中にある血管が出血することです。症状は、ふらつき、話しにくくなる、手足が動かしにくくなるなどさまざまみられます。くも膜下出血のように激しい症状ではない場合もありますが、出血の部位や範囲によっては死に至ることもあります。

(3)脳梗塞

脳梗塞とは、脳の血管がつまり、血流が途絶えて脳の細胞が死んでしまう病気です。血管がせまくなったところにコレステロールの塊が詰まったり、心臓の血管にできた血栓(血の塊)が脳の血管に移動して詰まったりして発症します。麻痺や認知機能の低下など、後遺症が残る可能性もあり、発症前と同じ日常生活に戻れないこともあります。また、「脳卒中」という言葉もよく聞かれますが、脳卒中は脳の血管が破れたりつまったりする病気全般をいいます。

つまり、ここで挙げたくも膜下出血、脳内出血、脳梗塞をまとめて脳卒中といいます。「脳血管疾患」は、脳卒中よりも範囲の広い概念で、脳の血管に関するさまざまな病気を指します。

脳血管疾患の原因は?自動車運送業との関連性とは

国土交通省自動車局は、平成17年から平成22年までに中部運輸局管内で運転者の健康に起因する事故及び居眠り運転による事故が発生したとして報告のあった事業者に対しアンケートを実施しました。

その結果によると、健康起因事案を起こした運転者は、日本人平均に比べ健康指標の数値が悪いことが分かりました。特に中性脂肪は、日本人の平均値が157であるのに対し、脳疾患者は259と多くなっています。*2

引用)国土交通省自動車局「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」 
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h26_3.pdf p5

脳血管疾患は、生活習慣病のひとつです。生活習慣が悪化することで、脳血管疾患にもつながります。脳血管疾患の危険因子には、高血圧や高脂血症、動脈硬化などがありますが、これらは関連しています。高血圧があることで血管に負荷がかかり動脈硬化になりますし、高脂血症によってコレステロールが増えすぎても動脈硬化になります。これらの危険因子は、進行しているかどうか自覚しにくく、生活習慣に気を付けたり適切な治療を受けなければ悪化していきます。

自動車運送業に携わる方は、生活リズムが不規則になったり、運転により座っている時間が長くなったりしがちです。脳血管疾患を含む生活習慣病は、一度発症すると治療が長期化しやすくなります。「今は症状がないから大丈夫」ではなく、できる限り発症する前から意識して予防することが大切です。

脳血管疾患を防ぐためにできること

脳血管疾患を防ぐためには、健康習慣をコツコツ続けることが大切です。全部は難しくても、どれか一つでも参考になれば幸いです。

(1)健康的な生活習慣

健康的な生活習慣とは、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠が基本です。

例えば、高カロリーなメニューが好きな方が、急に毎日の食事をヘルシーなメニューに変えるのは精神的にもつらいと思います。その場合は、週に2日はカロリーを意識してメニューを選ぶ、副菜を1品追加するだけでも栄養バランスがよくなります。その他、睡眠時間があまりとれなかった翌日は意識して仮眠をとることも大切です。急にガラッと変えるのではなく、今の生活習慣からほんの少し意識して改善を目指しましょう。

(2)適度な飲酒と禁煙

過度な飲酒と喫煙は、生活習慣病の危険因子です。厚生労働省は、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度と定めています。これは、「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当します。*3お酒が好きな方は、普段どれくらいの量を飲んでいるかチェックしてみましょう。

また、喫煙は生活習慣病だけでなく、がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)など他の病気との関連性も指摘されています。「急に禁煙と言われても難しい」と感じるかもしれませんが、周囲の協力を得たり禁煙外来を受診するなど、あらゆるものを活用して禁煙しましょう。

(3)定期的に健康診断を受ける

先述のように、脳血管疾患の危険因子である高血圧や動脈硬化などは、自覚症状があまりありません。そのため、健康診断で定期的にチェックすることが大切です。そして、もし健康診断の結果「要精密検査」で、その後病院を受診していないという方がいたら、できるだけ早めに受診してください。

要精密検査でも必ずしも病気だとは限りませんし、もし病気が見つかったとしても早期に治療することで健康に生活できる確率が高まります。日々過ごしていると健康への意識が薄れがちですが、健康診断をきっかけにして自分の体を労わるようにしましょう。

【まとめ】

事故の原因にもなる脳血管疾患は、健康的な生活習慣を心がけることで発症リスクを抑えることができます。

自動車運送業に携わる方は、日頃自動車の定期点検をしていると思います。

同じように、自分自身の健康や生活習慣も定期的に確認し、安全運転に努めましょう。

【参照サイト】

*1参考)国土交通省自動車局「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」  https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h26_3.pdf p4

*2参考)国土交通省自動車局「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」  https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h26_3.pdf p5

*3参考)厚生労働省「e-ヘルスネット [情報提供] 飲酒のガイドライン」             https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html

浅野すずか フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。

 

働きやすい職場認証制度とは?

 

「働きやすい職場認証制度」は、自動車運送事業者(トラック・バス・タクシー事業)の運転者の労働条件や労働環境を第三者機関が評価・認証する制度です。

 

[1]法令遵守等、[2]労働時間・休日、[3]心身の健康、[4]安心・安定、[5]多様な人材の確保・育成、[6] 自主的、先進的な取組み(一つ星認証では参考)の6分野について、基本的な取組み要件を満たすことにより認証されます。

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