中国ロックダウン生活で分かった! 物流の価値と「運転手」の有り難さ

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先日、筆者が暮らす北京でとある混乱が起きた。

市政府が「ダイナミック・ゼロコロナ」を今後5年続けていくとのアナウンスを行い、そんなの我慢できないと市民が猛反発してあわてて撤回。*1

中国でよくある朝令暮改の典型例だ。

住んでいるマンションで一人でも感染者が出れば建物ごと封鎖、出かけた先で感染者がいれば接触者とされ自宅待機か強制隔離……。

世界でも突出して厳しい感染対策で、誰もがウィズコロナに移行すべしと思っていても、口に出せない。

そんなモヤモヤの中、日々さまざまな問題が発生しつつもなんとか暮らせているのは、物流が動いているからだ。

生きていく上で最低限必要なものとして一般的に挙げられるのは「衣・食・住」の三つだが、実際のところ人間の暮らしはそんなに単純ではない。

持病を抱えていれば薬がいるし、自宅勤務に移行するにもそれなりの仕事道具がいる。

何カ月も家に閉じ込められている以上、気晴らしに欲しい物だってあれば、嗜好品も欲しくなる。

いくらお金があっても物流がストップしてしまえば、それらがわれわれの手元に届くことはない。

要するに、多くの人々は中国で今も続くコロナ騒動により、痛感したのである。

社会を回していく上で絶対必要なものが、一体何であるのかということをーー。

2020年初頭から今日に至るまで、中国では幾度となく感染拡大の波が生じ、そのたびに全国の物流網がダメージを受けては復活してきた。

今年の上海ロックダウンでは本当に物が届かなくなり、一部では混乱もあったが、それでも最終的にはライフラインの完全な断絶を防いだ。

結局のところ、物流インフラとは命綱。

そのような気付きについて、ここでは筆者が体験したコロナ発生以降の北京生活、また知人・友人たちから聞いた各地の模様などを織り交ぜつつ語ってみたい。

コロナ下で無人の街を駆けたドライバーたち

2020年1月23日は、自分にとって忘れられない一日である。

湖北省の省都・武漢市が午前10時より新型コロナ封じ込めのためロックダウンされ、その衝撃は中国全土、ひいては世界中に伝わった。

時は折しも中国の旧正月直前で、早い人はすでに帰省なり海外旅行なりに出かけているという、年に一度の民族大移動期。

自分が暮らしている北京では旧正月連休が前倒しされ、できるだけ自宅から出ないようにとのお触れこそあったが、つい先日まで上海で見られたような全区域の封鎖措置などは行われなかった。

それでも街に出かけると、普段は人混みで歩くだけでもストレスを感じる市内の大通りが、全くの無人。

店の営業は自主的に休業するところもあれば、気合いで開けているところもあるなどまちまちだった。

つまるところ、北京では発生当初、当局からの統一的かつ強制的な指示というよりも、それぞれの自己判断の結果として街から人影が消え、店は営業を停止し、ゴーストタウンとなったわけだ。

これは無理からぬ話で、何しろ当時は新型コロナウイルスとはいかなるものか、どこまで感染が広がっているのかなど、分からないことだらけだった。

信じがたいデマも一部で広がっていて、タバコや爆竹の煙でウイルスが死ぬという噂が伝わり、街の電光掲示板にそれを否定するメッセージが表示されるなどということもあった。

また、地方の農村部ではウイルスを中に入れまいとして、村民たちが自警団を作り検問所を各地に作るという事態が多発。*2

当時のそのような情報収集のために、自分が主に使っていたのは中国国内のSNSだ。

官製メディアも見るには見るが、基本自国にとって悪いことは報じないので肝心な部分はSNS頼りになってしまう。

そこでまず自分が感じたのは、「店から品物がなくなるのではないか」ということだった。

膨大な都市人口を支えるのは、外地から入ってくる食料や日用品。

物流が途切れればあっという間に物不足に陥るのは明らかで、実際に農村部では収穫物の出荷ができず廃棄しているという話がSNS上に流れていた。

いや、それ以前にそもそも自分の日々の食事は、どうなるのか。

当時、食事は基本出前に頼りきりで、買い物も全てネット通販を利用する生活スタイルだった自分。

毎日のように門前まで荷物を届けてくれるドライバーたちはライフラインであることに、遅まきながら気付かされたわけだ。

武漢ロックダウンから数日後、ものは試しに出前を頼むと、いつもと変わらず出前の弁当が届けられた。

また、さすがに宅配便は止まっているかなと思いつつ、出荷元が北京市内のECショップで品物を購入すると、これまた何事もなく到着。

普段なら何とも思わないだろうが、この時ばかりは正直言って感動してしまった。

当局が「全然大したことないので動揺しないように」「でも人との接触は極力さけよ」という相反するアナウンスを発し、どこに感染リスクが潜んでいるか分からない中、街を駆け抜けるドライバーたち。

以来、コロナ下で彼らの姿を目にするたびに、神々しい存在に思えた。

これは全く誇張のない、自分の本心からの思いである。

今振り返ると、当局は発生源とされる湖北省は別にしても、それ以外の地域では物流だけは守らなければならないという意識があった。

実際、政府が当初から言っていたのは「復工復産」、つまり止まっている企業活動や工場生産の速やかな再開であり、ここでは特に外資系企業が優先された。

中国は世界のサプライチェーンに組み込まれており、生産を止めて世界的な物流を滞らせれば、外資が逃げることは必定だからだ。

都市の物不足も最初の買いだめ騒ぎの後は落ち着き、長距離トラックなどでの輸送は移動制限の例外として動いていると報じられた。

つまり、初動のコロナ対策にはさまざまな問題がありながらも、中国は物流を重視するという合理的な判断ができていたのだが、不思議なことに今年起きた上海ロックダウン騒ぎでは、この教訓が生かされなかった。

人口2600万のメガロポリスで物流がマヒし、混乱が発生したのである。

物流が止まった時にあなたは生き残れるか?

今年の上海ロックダウンを簡単に言えば、最初は4日間家から出るなと言われていたのが、結局約3カ月閉じ込められたということだ。

その間、部屋から一歩も出られない場合もあれば、住んでいる集合住宅の敷地内は出歩けるケースもあり、集団隔離施設に送られる人々もいた。

ニュースでは各地からどしどし支援物資が入ってきていると伝えられたものの、問題はそれらをいかに各家庭に届けるかという「最後の1キロ」の部分で発生。

上海の友人に聞いた話では、まず宅配員の数が圧倒的に不足していて、ドライバーを押さえるのに金の積み合いが起きたという。

ただ、普段ならありえない金額でなんとかドライバーを確保したとしても、マンションが封鎖されていて中に入れない。

代わりに受け取るのはマンションの管理組織や住民委員会だが、今度は各家庭に届くまでに時間がかかったり、下手すれば「物を通じた感染の危険がある」などといって捨てられることもある。

日本のニュースでは、ある上海在留邦人が全く備えなしにロックダウンに突入し、干し梅で飢えをしのいだ話が報じられた。*3

この一報が出た後、上海で会社を経営する友人から連絡があり、「あれ、うちの社員なんですよ。酒とツマミしか買い置きしていなくて、せめて水とカップラーメンくらい用意しろって言ったんですけどね」などと裏話を語ってくれたのだが、笑えなかった。

何しろ自分とてその日本人と大差はなく、いま突然北京で感染が拡大し、3カ月閉じ込められたら生きていられるか自信がないからだ。

21世紀、しかも世界に誇る大都市で、物流ストップによって一部で飢餓寸前となる事態が起きた。

さすがに日本で似たようた施策が取られることは考えられないものの、災害などによって物流が寸断される可能性は十分にある。

そのために普段からの備えをすることは、もちろん大事。

だが、究極的には物流インフラがいかに大事なものであるか、皆が再認識することこそ最も必要であると考える。

在中邦人たちはここ数年の経験を通じ、人によって程度の差はあるだろうが、物流が持つかけがえのない価値を知った。

中国の人々も、物流業に従事する人々へのリスペクトの念を持つようになったと自分は見ている。

物流そのものはもちろんのこと、ドライバーを始めとする物流を支える人々の活躍なくして、われわれの暮らしは成り立たない。

ごく当たり前に存在するものに対し、われわれはそのありがたみをつい忘れがちなもの。

だが、実際には多くの人の汗と努力によってその「当たり前」が保たれていることにも、ぜひ思いを馳せてみていただきたいと願う次第である。

*1時事通信「ゼロコロナ『あと5年』に騒然 市トップ発言めぐり混乱―北京」https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062900860&g=int

*2関西テレビ「【新型コロナ】自警団、発熱者の通報も…混乱する中国の市民生活<上海・現地リポート>」https://www.ktv.jp/news/feature/20200216/

*3朝日新聞「絶食48時間、『男梅』で飢えをしのいだ日本人女性 都市封鎖の上海」https://www.asahi.com/articles/ASQ4R7262Q4LUHBI02Q.html

御堂筋あかり スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

 

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